夜間飛行

陽だまりを追いかける

1/25 13:00 ミュージカル『マタ・ハリ』 観てきました

ひたすらに翻弄されてしまった。
言いたいことも受け取ったことも多すぎていつもよりなぜかコラム調になってしまいました。

結末を含めてストーリー全般のネタバレをします。
でもこれから見る人はなにも見ないでほしい(わがまま)

1/25 13:00 @梅田芸術劇場メインホール
ラドゥー/加藤和樹 アルマン/東啓介
一部敬称略


それは幻 

マタハリ(柚希礼音)

柚希さん演じるマタハリの半生に、彼女に魅了されてしまった。
1幕では同じ境遇のアルマンに対して孤独であった彼女がほどけるような、2幕では選び抜くために自分らしく生きぬくために強くある彼女の姿に圧巻されてしまった。
個人的には最初のダンスシーンの太陽のようなオレンジの衣装が好きです。開幕して最初のナンバーは『生きろ!~寺院の踊り1』。戦争の中、民衆たちが声を上げている、そこに不意にあらわれる陽炎のようなマタハリの姿はなによりも妖しくも神秘的。


ラドゥー(加藤和樹

この人の感情はどう説明したらいいんだろう。
アルマンとマタが生んだ感情がロマンチックにまぶたに浮かぶ心地のよい夢に対して、ラドゥーがマタハリに持った感情はとても厭らしくドロドロして、幻にとり憑かれたような感じ…
アルマンに対してお前も劣情を抱いただろう?と煽る場面、そのときのラドゥーがぞくぞくする。アルマンを、その瞳に映ったマタハリを執拗に迫るような。
彼は、大佐として多くの命がその手にかかり、責任を預かる身。だからこそ、決して手の届かない自由であるマタに焦がれてしまったのか。でもそういうには少し歪みが大きすぎる…。


ところでオールバックとかきちっとした髪型が乱れるところが嫌いな女子います?いません。

アルマン(東啓介)

如実に変化が表れるのはアルマン。
戦争が終わったあとの自分が想像つかない、と話したそんな青年が恋を重て育て、二人で一緒に暮らしたいというありふれたものを一番に手にしたいという願うようになる。
「俺を連行するの?」「いいえ、あなたを誘っているの」いたずらに笑いあいながら交わすこのやりとり、映画のようでキュンキュンする…
二幕では戦闘機が墜落し立って歩くことさえままならないほどの負傷を追い、敵地にひとりとなるアルマン。いつ敵にみつかるのか、命かながらの中、マタハリ―マルガレータを思い歌い上げる姿、その瞳がなによりもきらきらとしていた。

わたしは東啓介さんを推し俳優といっており、少なからずは彼のことを追いかけているのですが、
本当に本当にこの公演で驚くくらいに成長してる。成長という言葉ではすこし物足りないくらい。
一個前にスカピン団としてコーラスをしていたけれども!
そんな子が2カ月後に自分がアンサンブルを連れて舞台の真ん中に立ってるって、メインホールでソロナンバーを歌うなんて信じられる…?まぁ本当なんですけれども…
盛り上がりがただ大きく強く!という感じではなく、ぐぐっと深く広がるような声。
キャリアの積まれたちえさん、加藤さんとは比べてしまうとやはり負けてしまうところもあるけれど、それが悪い意味でなく伸びしろがある、まだまだいいものを見せてくれる、そう感じます。
ペダステでも刀ステでも薄ミュでもテニミュでも、すこしでも彼の名前に思い入れのある方はどうか彼のアルマンをみてほしい。

アンナ(和音美桜

憧憬 わたしはアンナが好きだ。たぶん私の応援スタンスはアンナだ。
彼女はマタハリに惹かれて彼女の衣装係になった。彼女が着飾れば、衣装を纏えば、それらに魂がやどるようだ、なんていっていた。わかる。推しの周りってきらきらしてるよね。(分厚い推しフィルター)

慈しみ  アルマンと出会い争いのない平和な日常のためにラドゥーの提案に乗るマタハリ。命を狙われる、危険だとアンナは説得するがマタハリは心を閉ざしてしまう。アンナがそんなマタハリに送ったものは否定でも肯定でもなく、頬へのキス。設定では日本版のアンナはマタハリよりも年下のよう。*1憧れの人がリスクのある行動を犯す、自分の意見を聞き入れなくなった。それでも自分はあなたのそばにいると伝えるようなあの場面はアンナのマタハリに対する慈しみを感じられる。

友愛 「今日の客入りはどう?」「大入り満員ですわ」劇中何度も交わされるマタハリとアンナのステージに上がる前の決まった呪文のような会話。様々な場面で近づきすぎずそっと寄り添いあう彼女たちの距離間を絶妙に表してくれた。そして最期にマタハリの強さを、アンナのいじらしさを引き立たせるなんて。

いろいろな愛がある。アルマンが出会った世界を鮮やかに彩るような希望の愛、ラドゥーが気付いた歪んだ愛。
わたしはアンナが夢とともに寄り添い描いた、そんな愛が好きだ。


観終わった後、1幕と2幕じゃ別のものをみている感覚だった。
1幕は映画の世界。民衆たちの他愛のない日常を下にアルマンともに夢見た穏やかな朝日、人々を魅了する演じられたマタハリ
2幕は転がり落ちるような目の前で広げられる愛してしまったから故に起こる無情な運命、時代に翻弄され様々な思惑にとらわれるマタハリ
常に端で姿をみせている銃兵に、裏では戦争は続いていること、マタハリもアルマンもラドゥーもこの戦争に踊らされていることを思わせるようだった。

裁判のシーンから涙が止まらず、牢獄のなかでも凛とした姿の彼女に心を打たれる。最後のシーン、静寂の中の景色が彼女の走馬燈ように思えたが他の方はどのように見えたのか知りたい…。

これからも観劇の回数を重ねていくのですが、どうしても今感じたことを残したくてまとめてしまいました。
2回目書くときはうまくまとめてもっと軽くしたいです。あのマタハリがベルリンにいくときの曲ゴダ…ゴみたいで好きなので…。

*1:ちなみに先に上演した韓国版では老婦人